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第14回 変化の時代を生きる薬剤師(薬局と薬剤師の現状)

こんにちは! ネジです!

今回は「現代の薬剤師を取り巻く環境」についてのお話です。

前回は薬剤師の過去についての記事でしたが、今回は現在の薬剤師はどのような環境で働いしているか、これからどのような薬剤師像が求められているかという内容です。

前回の記事をまだ読んでいない方はぜひこの記事を読む前に読んでみてください。

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薬局経営の成り立ち

まずは現在の薬局が置かれている状況を理解してもらうためにも薬局の経営についての話をしたいと思います。

調剤薬局の収益構造

調剤薬局は市販薬や健康食品等の販売も行っていますが、収益のうち90%以上は処方箋を応需して調剤することで得ています。

町の小さな薬局(薬店)はそうではないかもしれませんが、チェーン展開しているような調剤薬局では処方箋による収益が90%を下回ることはほぼないと言っていいはずです。

そして、この処方箋による収益は主に調剤技術料と薬学管理料、薬剤料から成り立ちます。

調剤技術料と薬学管理料、薬剤料とは?

調剤技術料は薬局で処方箋を受け付けることで発生する調剤基本料や薬を調剤することで発生する調剤料を足したものです。

“技術料”とは言いますが、現在では特殊な技術を要するようなことをしている場合の方が少なく、病院(医師)でいうところの初診料(再診料)や外来診療料のように、利用することに対しての基本料金としての意味合いが強いものです。この他に、ある程度の技術が必要な軟膏の混合や粉薬の計量などがあると発生する加算もあります。

薬学管理料は薬の説明を行い、薬歴という薬のカルテのようなものを記載することで発生するものです。薬剤師が薬を渡す際に聞き取りを行った内容が薬歴に記載されています。この薬歴を書くことが現在の薬剤師の仕事としてはメインと言えるような業務ですね。

薬剤料は薬そのものの料金です。薬局から患者さんに薬を譲渡する際には公定価格である”薬価”での販売になりますが、卸から購入する際には”薬価”よりも10~20%程度安い(チェーン店の規模等により異なる)価格での仕入れになるため、薬価と仕入れ値の差を”薬価差益”と呼びます。

上記の3つが調剤薬局の収益の柱となるわけですが、調剤技術料は各薬局が満たしている条件により異なるため、どの薬局を利用するかで自己負担が少し異なる場合があります。

薬局の経営としては調剤技術料と薬学管理料、薬価差益を合計した金額が薬局の粗利益となり、そこから賃金や経営にかかる各種費用が支払われ、残りが薬局を経営する会社の純利益です。

2年に1度行われる報酬の改定(調剤報酬改定と薬価改定)

ざっくりと薬局の収益に関する構造を説明しましたが、これらの費用は全て国の制度の中での運用になるため、2年に1度の頻度でその時々の情勢に合わせた報酬額の改定が行われています。改定は西暦で偶数年の4月1日に行われるため、次回の改定は2020年4月1日です。

調剤報酬改定調剤技術料と薬学管理料の改定)では「今まで報酬として定めていた金額が適正か?」といった内容や「患者ニーズや抱えている課題を解決するために新しい報酬の設定が必要ではないか?」という事柄が話し合われます。

薬価改定薬剤料の改定)ではその時々の薬の使用傾向から「高額な医薬品が高頻度で使用されることで国の医療費を圧迫していないか?」というものや「医薬品卸から医療機関への卸値(薬局の仕入れ値)はどれくらいか?」といった観点から改定が行われます。

薬剤師がいることでメリットを見いだせれば調剤報酬が上がることもありますが、ほとんどの場合はマイナス改定となります。また、薬価も上がる品目というのは珍しく、ほとんどの薬は薬価が下がります。

このように調剤報酬改定・薬価改定の影響で基本的には薬局経営として数%(2~5%程度)のマイナスになります。

求められることは増えるのに収益は減る薬局

調剤報酬や薬価は2年に1度、数%下がり続けて今があるわけですが、薬剤師の業務は昔よりも高度化・複雑化している傾向にあります。

前回の記事でお話しした10~30年前の時代は、薬剤師は職能を発揮したくてもできないような環境もありながら経営上は問題ない時代でした。

逆に言えば、職能を発揮してもしなくても報酬を得られる時代だったと言えるでしょう。

現代はその時代よりも一般的に使用される薬の種類は増え、医療は複雑化し、薬剤師に求められることも増えています。その1つとしてポリファーマシーの問題があります。

第9回 ポリファーマシーってなに?こんにちは! ネジです! 今回はここ数年で大きな話題になっている"ポリファーマシー"について説明していきたいと思います。 私...

昔であれば残念ながらポリファーマシーのような状態も当たり前でした。ポリファーマシーが叫ばれるようになったのもこの数年であり、少なくとも私が学生だった頃にこのような課題があり、解決するためになにが必要かということを学んだ記憶はありません。(現在は大学でも教えているかもしれません)

ただ昔の薬剤師が全て悪いというのではなく、医療の進歩や先人の努力により、どうにもできなかった問題が、解決すべき課題に変わってきたのだと考えるべきなのだと思います。

薬局・薬剤師が抱える課題

ポリファーマシーのように現在の医療において解決するべき課題とされていることとして以下のようのものがあります。

  • 残薬の解消
  • 在宅医療のニーズの増加
  • 医療機関との連携
  • 増加し続ける医療費

代表的なものですが、現在の医療が抱えている課題で薬剤師が関係するものはこのようなものがあります。

残薬は慢性疾患で処方されてる薬を飲み忘れる等により生じる余った薬のことです。これは国全体で年間数百億円以上あると推計されており、この残薬の解消のために薬剤師は活動しています。

また、高齢化により、病院を受診することが困難になるなど在宅のニーズも増加傾向であり、高齢者が増加したことで医療費の増大も問題となっています。

この1つ1つについてはまた機会を見て記事を作成するつもりですのでそれまでお待ちください。

“対物”業務から”対人”業務へ

“対物”業務から”対人”業務へというのは2018年から薬剤師業界で言われている事柄です。

文字が表している通り、「業務の中心を”薬”をただ取り扱うことから、”患者”と関わり、”患者”の利益のための行動ができる薬局・薬剤師業務」に変更することが現在の薬剤師に求められている内容です。

前回の記事も読んで頂いた方からすれば当たり前だと思うような内容だと思いますが、今は改めて”対人”業務を進める流れになってきています。

立地勝負、減る運命にある薬局

医薬分業は平成30年間をかけて進んできたことは前回説明した通りですが、そのほとんどが”点分業”と呼ばれる形です。

点分業は、病院の前に薬局があり、病院受診後には目の前の薬局に寄って薬をもらうという医薬分業の形です。

それに対するのが”面分業“と呼ばれる形です。面分業は病院の前などではなく、住宅地の中や商店街、スーパーマーケットの中など生活環境の中に薬局がある形で、特定の医療機関からではなく、様々な医療機関から処方箋を受け付けるスタイルの医薬分業です。

以下、それぞれのメリットとデメリットです。

簡単に点分業と面分業を比較するとこのようになりますが、薬局業界では圧倒的に点分業が主流です。

チェーン展開している薬局ではクリニックを誘致して、その近くに薬局を立て経営を安定させることを第一優先としてきました。

もちろん、経営する以上、安定的に収益を得るためにこのような方法をとること自体は否定しようと思いません。しかし、安定的に収益を得られることから薬剤師の専門性を発揮していない、もしくは医療機関との関係を壊さないために発揮できないような事例があったことも事実です。

現在では割合としてはかなり少ないと思いますが、薬局側に「下手な説明はしないように」というような圧力がかかっているために「薬の相談をされてもあまり深く話すことができない」という薬局もあるようです。

これは立地勝負の経営をやってきたことの弊害でもあるように思います。

また、このような背景のためか、厚生労働省は「今後、薬局の数を現在の約6万件から半分程度にする」ということを発表しており、これからは政策として薬局の役割の見直しが進むと考えられます。

経営陣と現場の乖離

チェーン展開している薬局は、経営陣が薬剤師の場合と経営陣が薬剤師でない場合のどちらも存在します。

経営陣が薬剤師の場合には過去にそのチェーン薬局内で働いていた薬剤師が昇格してその役職についている場合が多く、そのような場合に経営陣が考える薬剤師の働き方(過去の薬剤師の働き方)と現在の現場で求められている薬剤師の働き方にずれが生じているように感じています。

どんどん経営が厳しくなる業界で少しでも利益を上げるための努力を現場に求める会社もあるようですが、医療としての課題を抱えている現場で利益を追求することが難しい側面もあるように思います。

この乖離が薬剤師が社会的に評価されるために行動する時間を減らしてしまっているのではないかと個人的には考えています。行動する時間があれば解決するのかと言われると薬剤師の力量の問題もあるため、また少し別な問題かもしれませんが。。。

まとめ

では、今回のまとめです。

まとめ

・薬局の収益は徐々に減ってきているのが現状

・しかし、抱えている課題は以前よりも増えている

・課題が増えた分、相対的に薬剤師の力量が不足している

今回は現在の薬剤師が抱えている課題や置かれている環境についての内容でした。

経営上は良い思いができた過去から、医療の発展に伴って解決するべき課題が増え、やっと能力が求められるようになったのが現在です。相対的に言えば、薬剤師は徐々に大変になってきいるというのが理解して頂けたのではないかと思います。

ただ、私はこれが本来求められている薬剤師像であり、それができないのであれば社会的には不要と言われだけなのだと思っています。

薬剤師業界では調剤報酬改定を逆風と表現をすることが多いですが、自然に吹く風とは違い、「誰かが吹かせている風」を逆風だと感じるのであれば、進む方向が間違っていたと思うしかないのではないか思います。

次回はこれから先の未来に薬局や薬剤師がどのように変化していくかを考察する予定です。

では、次回もよろしくお願いします!

ABOUT ME
ネジ
6年制薬学部を卒業し、現在は地方の薬局で管理薬剤師をしています。 薬や薬局についての情報の他、株式投資や読んだ本の紹介などしていきたいなと考えています。
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