一般向け

第6回 OD錠やCR錠とは?(製剤学)

こんにちは! ネジです!

今回のテーマは「OD錠やCR錠とは?」です。

そもそもOD錠やCR錠を聞いたことがないという方もいるかと思いますが、薬は成分だけで治療効果が決まるわけではなく、錠剤そのもの等にも工夫がされているという内容で、薬学的には「製剤学」という分野の話です。

Contents

OD錠やCR錠ってなに?

さっそくですが、OD錠やCR錠の説明です。

OD錠の”OD”は”Oral Disintegration“の略で日本語では口腔内崩壊錠と呼ばれます。

“CR”は”Controlled Release“の略で日本語では徐放錠です。

それぞれの意味として、OD錠は嚥下機能が落ちた高齢者などでも飲みやすいように、口の中で崩壊しやすく設計されています。CR錠は前回の「薬物動態パラメータ」でお話しした、”半減期”が短い薬剤を少しずつ吸収させるようにすることで効果を持続させることを目的としています。

また、CMなどでも聞く”糖衣錠”は文字通り、砂糖で成分をコーティングすることで薬の苦味を隠してくれていたりもします。

今回はアダラート®(成分名:ニフェジピン)という薬を例にCR錠(製剤学的な工夫)の意義を説明していきます。

製剤学的工夫の代表例~アダラート®の歴史~

アダラート®は日本では1976年にカプセル剤として発売されました。

まず、アダラート®が何の薬かというと高血圧治療のための薬です。なので、薬を服用すれば血圧は下がります。しかし、ニフェジピンは約2.6時間しか半減期がなく、1日3回の服用が必要でした。

※Cmaxを132ng/ml、Tmaxを約1時間、T1/2を2.6時間、服用間隔を8時間として表を作成(10mg投与時の薬物動態パラメータより)

アダラートカプセルは®1日1回では薬の効果が持たないために1日3回服用をしますが、体内では上の表のように薬が推移しています。アダラート®の場合、表のグラフと薬の効果は比例するため、グラフが高いときは血圧を下げる効果が高く、グラフが低いときはあまり効果がないと考えることができます。

現在では、血圧の変動は可能な限り少ない方が良いというのが一般的ですが、短い時間で吸収されて、効果を出し、排泄されるという薬だったアダラート®は1日のうちに血圧が乱高下しやすい薬でした。

血圧が乱高下しやすいと血管にも負担がかかりますし、血圧が低くなったタイミングで心臓が血圧を上げようと頑張ってしまう”反射性頻脈”などの副作用も出やすいため、改良が必要でした。

しかし、薬の選択肢が少なかった当時、アダラートカプセル®は血圧を下げる効果が優秀であり、臨床でよく使用される薬でした。

アダラートL錠®の登場

1日3回の服用が必要ということは服用忘れの可能性も高くなりますし、副作用のリスクもあったため、アダラートL錠®という薬が1985年に発売となりました。

“L”は”Long acting”の略で”長時間作用型”の意味を持ちます。

このアダラートL錠®は成分が同じでも、成分を身体の中に届ける錠剤に工夫をすることで効果が約12時間続く薬となりました。

 

  • アダラートL錠®添付文書より引用

これは薬を錠剤にする際に錠剤の外側を徐々に溶けるコーティングとすることと、その中の成分であるニフェジピンの粒を均一化することで薬の効果を持続させることが可能となりました。

上の表からもグラフがなだらかになっていることが理解してい頂けるかと思います。

アダラートCR錠®の登場

さらに1998年にはアダラートCR錠®製剤が登場します。

これはさらに工夫を加え、24時間効果が持続するようにした製剤で、服用回数も1日1回で問題なくなりました。

  • アダラートCR錠®添付文書より引用

“CR”は先ほども書いた通り、”Controlled Release”の略で”薬の放出制御”という意味を持ちます。「徐々に薬を放出する錠剤」ということから徐放錠とも呼ばれます。

アダラートCR錠®はアダラートカプセル®やアダラートL錠®と比べて、体内の薬の量の振れ幅が小さく、効果が安定しやすいことが表からもわかると思います。

これは下の写真のような製剤学的工夫が行われているためです。

この写真は本来、割ってはいけないCR錠を割ってみたという写真です。

外側の黄色部分と内側のオレンジ色部分がそれぞれ徐放性となっていますが、黄色部分が徐々に溶けてからさらにオレンジ色部分が徐々に溶けることで24時間、効果を持続させます。

また、3つの表を比べると同じ10mgの投与でもカプセルでは100ng/mlを超えるのに対して、L錠とCR錠では20~30ng/ml程度で推移しています。この数値に薬の効果は比例するため、カプセルでは副作用が起きやすかった理由も想像できます。

このように製剤学的な工夫を重ね、アダラート®は進化を遂げてきました。

現在は特許も切れてしまい、ジェネリックがメインとなっていますが、血圧を下げる作用が優秀であるためニフェジピンのL錠とCR錠は現在でも臨床で使われ続けています。

その他の製剤学的な工夫

その他の代表的な製剤学的工夫としては”腸溶錠”が挙げられます。

普通の錠剤は胃で溶けて小腸で吸収されます。

しかし、胃酸に触れると効果が弱くなってしまう薬や胃に負担がかかる薬などは胃で溶けてしまうと不都合です。そのため、”腸で溶ける錠剤(腸溶錠)”が作られました。

腸溶錠はpH7付近(中性)で溶けやすく、pH1~3(酸性)の胃の中では溶けにくい性質を持っています。

これにより「酸性では失活する(効果がなくなる)薬」も錠剤として飲むことができるようになりました。

製剤的な工夫のある薬剤を飲む際の注意点

OD錠では問題となりませんが、L錠やCR錠、腸溶錠では問題となる行為があります。

「錠剤を噛んで飲むこと」です。

噛んで飲むことがダメな理由はせっかくの工夫が意味をなさなくなってしまうからです。

噛んでしまったらアダラートL錠®やアダラートCR錠®はカプセルのように急激に吸収されてしまいますし、腸溶錠は胃酸から守られなくなってしまいます。

また、腸溶錠では「牛乳と一緒に薬を飲むこと」なども挙げられます。

これは牛乳がpH7程度であるため、牛乳を飲むと胃酸が中和され、胃のpHが6~7程度まで上昇してしまうためです。

本来は胃で溶けないようにしていたのに胃で溶けてしまうことで効果が落ちたり、胃を刺激したりということが考えられます。

ちなみに、コップ1杯の牛乳で胃のpHが元に戻るのに1時間程度かかるという報告もあります。

まとめ

では、今回のまとめです。

まとめ

・OD錠は口の中で溶けやすくした薬

・製剤学的な工夫は薬の短所を補ってくれる

・その工夫を無くさないために飲み方も大事

今回、紹介した以外にも様々な製剤学的な工夫がありますし、飲み薬だけでなく、目薬などでも工夫がされているものは多くあります。

また、同じような工夫でも使うアルファベットが製薬会社で違う場合もあるため、注意が必要です。(「長く効く」という意味で”L”、”LA”、”CR”、”R”などなど)

今回は薬剤師しか学ばない分野とも言われる「製剤学」のお話でした。

では、次回もよろしくお願いします!

ABOUT ME
ネジ
6年制薬学部を卒業し、現在は地方の薬局で管理薬剤師をしています。 薬や薬局についての情報の他、株式投資や読んだ本の紹介などしていきたいなと考えています。
最新の投稿