こんにちは! ネジです!
連載第4回の今回は「飲んだ薬はどのように身体に入るの?」がテーマの記事です。
薬学では「薬物動態学」と呼ばれる分野のお話です。口から入った薬が身体から出ていくまでにどのような動きをするかということについて考える学問です。
一度に説明するとボリュームが大きくなってしまうため、2回に分けてお話しできればと思います。
Contents
吸収・分布・代謝・排泄とは?
まずは薬が口から入り、身体から出ていくまでの過程をどのように考えるかです。
各過程を下記の4つの段階に分けて考えます。頭文字をとってADME(アドメ)と呼びます。
吸収(Absorption):薬が小腸から吸収されて血液中に入るまでの段階
分布(Distribution):薬が身体の中で広がっている段階
代謝(Metabolism):薬を身体から外に出しやすくするための段階
排泄(Excretion):薬が身体から出ていく段階
薬を口から飲んだ後、しっかりと身体に入っていかないことには薬は効果を出しません。
また、入った薬が身体から出ていかないのであれば別な影響が出てきてしまいます。
今回はその中で「吸収と分布」を、次回は「代謝と排泄」を中心に説明していきます。
食べ物や薬が身体に入るまで
現在は「口から薬を飲む」以外にも身体に薬を入れる方法がありますが、今回は基本的に口からどのようにして身体の中に入るかという部分について説明したいと思います。
まず、口から入ったものは食道、胃を通り小腸までたどり着きます。
小腸は薬の成分や食事の栄養を吸収する場所です。その後、残りの物質が大腸と流れていき、水分が吸収され糞便となります。
小腸からの薬剤の吸収
小腸からの薬剤の吸収には”トランスポーター“が関与します。トランスポーターは”輸送体”とも呼ばれるものでトランスポーターがあることで栄養や薬剤などの物質が身体の中に取り込まれます。
上の図は小腸の拡大図です。トランスポーターのイメージとしてはトンネルのようなもので、トランスポーターの種類によってトンネルを抜けられる物質も異なります。また、小腸から血管に移送させる(体内にモノを入れる)だけでなく、血管から小腸へ移動させる(体外にモノを出す)トランスポーターも存在します。
小腸のトランスポーターを通過した物質は、血流に乗り最初に肝臓へと向かいます。
肝臓では少し分解されたあと、全身へ
注射であれば薬はそのままの形で血管に入り、全身へと向かいますが、経口では肝臓で”代謝”が行われることで少し分解されたり、そもそもトランスポーターで全ての薬剤が取り込まれないなどの問題があり、投与した薬剤よりも少ない量しか身体に入りません。
つまり、○○錠100mgという薬を飲みこんでも、実際に肝臓を通り過ぎて全身に向かうのは20mgだけということです。
この経口投与の薬が全身血流に乗る割合を”バイオアベイラビリティ“と呼びます。上の例では100mgが20mgになっているのでバイオアベイラビリティは20%ということです。
分布とは?
“分布”は「薬が身体の中で広がっていく段階」と記載しましたが、先ほどから何回か出てきている「薬が血流に乗って全身に向かう」ことが分布にあたります。
この分布で大事なことは”分布”する際に薬はタンパク質に運んでもらわないといけないということです。
※上の図で荷台がタンパク質、カプセルが薬の成分を現しています。
薬は血液中のタンパク質にくっつくと一時的に効果を出せない状態となりますが、くっつくことで目的の部位まで運ばれていきます。
そして、目的の場所まで運ばれるとタンパク質から離れて細胞に取り込まれ、細胞の中でもタンパク質とくっついたり、離れたりしながら効果を現します。
運ばれている間にタンパク質から離れてしまう薬もありますが、そのような薬は一度組織に取り込まれた後、血液中の薬が減ってくるとまた血管側に出てきて全身を巡ります。
全身を巡る血液
血液は全身を巡っていますが、その中で何度も肝臓を通ります。
そのため、薬は肝臓を通るたびに肝臓で分解され、尿や糞便となり、身体から出ていきます。
ここは”代謝と排泄”の部分なのでまた次回に触れたいと思います。
吸収と分布で大事なこと
吸収と分布の部分で大事なことをまとめると以下のような項目になります。
・吸収過程で他の食べ物や薬の影響を受けることがある
・分布過程で必要なタンパク質が不足すると薬の効果にも影響する
「血圧の薬とグレープフルーツジュースを一緒に飲まないでください」というような話を耳にしたことがある方もいると思いますが、これは吸収過程への影響が原因です。
先ほどから「肝臓で代謝(薬の分解)が行われる」と説明しておりましたが、小腸でも少しだけ代謝は行われています。
その小腸での代謝をグレープフルーツの成分が邪魔してしまい、本来なら20%しか吸収されないような薬がそれよりも多く吸収されるようになり、予想以上の効果が出てしまう可能性があるため上記のような説明が行われています。
上の図ではグレープフルーツがない場合には薬の成分5個のうち、1個しか血管までたどり着いていないですが、グレープフルーツがある場合には2個がたどり着いています。(バイオアベイラビリティが20%から40%に上昇)
また、分布の際には運搬に必要なタンパク質が栄養失調や肝臓の病気などで減ることで効果を出す薬(タンパク質とくっついていない薬)の増加や身体の中に薬が留まりやすくなってしまいます。
そのため、吸収や分布の過程に影響することで薬の効果が予想よりも大きく出てしまう場合があります。
まとめ
では、今回のまとめです。
・薬は身体の中で”吸収”、”分布”、”代謝”、”排泄”を受ける
・吸収過程で服用した薬の一部が身体に入っていく
・分布過程で血液中のタンパク質が全身に薬を運ぶ
今回は薬が身体に入り、全身に広がるまでの過程のお話でした。
次回は代謝と排泄の話ですが、薬を考える上で吸収・分布よりも個人差が大きく、薬の効果に直接的に影響する話となります。
次回もよろしくお願いします!
追記:バイオアベイラビリティについて別に記事を作成しました!気になる方はぜひ!